Sweet dreams,

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映画、音楽、好きなものに関するあれこれ

Cat Powerキャットパワー カバー曲・コラボ作も豊富なシンガーソングライター

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前回の記事でオリジナルアルバムを紹介(Cat Power キャット・パワーの話〜ゆるくアルバム紹介〜 - Sweet dreams,)したキャットパワーですが、実はカバーアルバムを2枚も出しています。アルバム単位で2枚、というのはちょっと珍しい。

ソロの作品を出す合間に、息抜きと実験的な意味合いを兼ねて作っていたみたいですが、結構いい曲も多いので、紹介したいと思います。

 

カバー曲のがひょっとしたら有名かも

キャットパワーのカバー曲は、サントラやドラマの挿入歌で使われたりしているも多く、ともすると、単体ではオリジナル曲よりよく知られているものもあるかもしれません。

彼女のカバー曲は、とにかくアレンジが強い。完全に「私の解釈で歌ったらこうなりました」風で、一聴するだけでは判別できないこともザラです。

なので客観的に見てオマージュ作品ではなく、もはや古すぎて皆が聴かない曲を蘇らせるって側面が大きいかと思います。実際、カバーに選ばれている曲は、ディランにローリングストーンズ、ジャニス・ジョプリンなどのロック・クラシックが多い。

 

ただ、おそらく一番よく有名なカバーは、90年代の曲が元ネタです。アルバム未収録の「Wonderwall」。

 

Wonderwall

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オリジナルはご存知、イギリスの眉毛兄弟の名曲。これが↓

 

 

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こうなる。暗い。オリジナルと違いすぎて、原曲への思い入れが強い人には受け入れられないかも。もっとも原曲も歌詞を聴けば決して明るい曲ではないですが。しかしギター1本で切々と歌い上げる姉御は、眉毛(弟)ばりに男前ですね。

  

Sea Of Love

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続いて、色んな人にカバーされてきた”Sea Of Love”。もともとは黒人のおニイちゃんのバラードでした。ンババババー♪

 

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映画「ジュノ」のサントラにも使われたカバー。ザ・ラブソング!って感じの曲調ですが、彼女も他人の曲だからこそ、屈託なく歌えるのかも。「会った日のこと、覚えてる?あのとき、あなたが私のペットだって確信した」って歌詞は女性が歌うとなんかイイですね。

  

 

Ramblin' (Wo)man

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原曲”Ramblin’ Man” はびっくりするレベルに古いカントリーの曲。砂ぼこりが見える。「I can settle down(↑)」って声が裏返るの、なんかもう隔世の感がありますね。

 

 

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カバーはこれ。タイトルも”Ramblin’ (Wo)man” と、女性バージョン。バンドアレンジが見事にハマってて、曲の精神性はそのままに、現代っ子が聴ける曲にした好例だと思います。一つのところに留まれない、根無し草な男の悲哀を歌った歌なんですが、彼女自身を重ねて歌ってるところも、多分にありそう。

 

あとはシナトラの”New York, New York”とか、ローリングストーンズの”Satisfaction” 、ジョニ・ミッチェルの"Blue"、ヴェルヴェット・アンダ=グラウンド の “I Found The Reason” のカバーが有名どころでしょうか。

カバーアルバムには、“The Covers Record “と、“Jukebox” の2枚がありますが、”The Covers Record “の方が、より削ぎ落としました!!って感じのギターとピアノ弾き語り曲ばっかりです。端的に言って地味です。もっと言えば、“The Covers Record “は彼女の初期の作風に近くて、”Jukebox”は、有名なバンドと一緒に作品を作ったりした後で、もう少し自由に楽しく作ったアルバムなのかな、という印象です。

 

おまけ:コラボ

カバーではないですが、キャットパワーはその独特の声からか、よくゲストボーカルに招かれています。エディー・ヴェダー、ベック、あたりはよく一緒に共演している。hiphop とか畑の違うアーティストとのコラボも割と多い。

 

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ハンサムボーイモデル学校、というおふざけ感満載のhiphop/プロデューサーデュオ。

気だるい声が曲にとっても合ってます。

 

 

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ちょっと意外な共演。どういう経緯で「キャットパワー呼ぼ」ってなったんだろう。

 

 

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こちらはバックコーラスですが。みんな大好きBeckのMorden Guilt。キャットパワーはこの曲と"Walls" のバックコーラスで参加しています。ベックの声と合わないわけがない。

 

ソロアルバムのニュースはないですが、ここ数年でもライブイベントでボブディランの息子と共演したり、こういうコラボはたまにしているようですね。

 

Cat Power キャット・パワーの話〜ゆるくアルバム紹介〜

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キャットパワー、本名、ショーン・マーシャル。今は変わったけど、長らくジェーン・バーキンみたいなワンレングス姿がトレードマークでした。

これまでオリジナルアルバムを7枚、カバーアルバムを2枚出している彼女。基本的にはソロで活動している歌手で、染みるような低音のハスキーな歌声が魅力的です。

90年代後半~2000年代前半くらいが一番活動的でしたが、2012年にもアルバム出してます。音楽的には90年代のグランジを経たロックが基本ですが、出身でもあるアメリカ南部のソウルやフォークミュージックの雰囲気が強い。なんでなるほどというか、エディ・ヴェダーデイヴ・グロール両名が、彼女の作品が好きだと度々公言してます(共演もしてる)。

すんげえ美人で、すらっと立ち姿も美しい彼女はファッションアイコン的な仕事があった時期もありました。関係ないけど女にモテそう。

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最新作(と言ってももう5年前ですが)は”Sun” 。この時はフジロックで来日もしました。

その時のシングルが"Ruin"。

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彼女の曲にしては、ポップで勢いがある曲。そしてこの金髪+ショートヘアにはおったまげた。

 

それ以後は新作の話なんかも聞きませんが、個人的には相変わらず聴き続けている、思い入れのあるアーティストの一人です。以下に、メインのアルバムを中心に紹介していきたいと思います。

 

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"Moon Pix"

最初にキャットパワーが注目されるきっかけになったのは、1996年の”What Would The Community Think? “というアルバムですが、この時点ではまだごく一部での評判、という感じでした。決定的になったのは、その次の”Moon Pix”というアルバム。精神的に追い込まれて田舎の農場に閉じこもってた彼女が悪夢を見た夜に一晩で書き上げたという、いかにもなエピソードがある作品なのですが、これが高く評価されました。

 

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"Cross Bone Style"

アルバムのシングル。途中展開やメロディーがわかりにくくて難解な印象も与えますが、不思議な魅力のある名曲。余談ですが、この頃の彼女は、とにかく中性的な美しさが際立ってて、そこらの女優よりも存在感あると思います。

 

f:id:chico08:20170614161833j:plainこれとか

 

ですが、私は正直このアルバムがあまり好きではありません。本当に悪い夢を見ているかのような張り詰めた空気は圧倒的だし、大好きな曲も何曲かあります。が、いかんせん、暗すぎる…。全編通して聴くのはしんどいです。アルバム単位で一つ選べ、と言われたら、やっぱりその次のアルバム、”You Are Free” を選ぶと思います。

 

 

"You Are Free"

収録曲が映画やTVでも使われたりもして、広くロックファンにも人気が出たアルバム。友人に最初の一枚として薦めるならこれです。ギターが格好いいアップテンポの曲もあり、彼女らしい気の滅入る弾き語りもあり(半分くらいはそう) "Fool"  "Maybe Not"  "God Woman"のような、バラードの名曲もあり…と、すごくバランスのいいアルバムです。

 

 

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“He War “ 

シングル曲。しょっぱなから自由すぎて、一回聴いただけでは「なんじゃこれ」となってしまいそうな、でも中毒性のある曲。ドラム叩いてんのはフーファイのデイヴです。似たとこだと、”Free” や”Speak For Me” もかっこいい。

 

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 “Fool”

 

全体として、上にあげた “Free”みたいなちょっと変わったリズムや曲の展開の仕方なんかは、いかにも90年代のオルタナっぽくて、文句なしにかっこいいですが、それだけじゃなくて”Fool” みたいな、フォークっぽい彼女のセンスが随所に見られるのがすごくいいです。ちょっと曲数多くて後半ダレるけど。

 

 

 "The Greatest"

で、この後3年のスパンを置いて作られたのが、”The Greatest” 。紛らわしいタイトルですがベストアルバムではなく、れっきとした新作でした。これは、前作とはえらい雰囲気が違って、南部の著名なバンドミュージシャンたちを迎えて作ったもの。そんなわけで、経験豊富なミュージシャンたちと楽しみながら作ったという、いい感じのリラックスムードが全編に漂う作品です。

日本でも人気のあるウォン・カーウァイの映画「マイ・ブルーベリー・ナイツ」のサントラに使われていたのは、いずれもこのアルバムの曲。

 

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“Lived in Bars”

シングル曲。バーで地元民と踊るキャットが超かわいい。このアルバムの雰囲気がよく出た曲&ビデオです。

 

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”Living Proof”

前述の「マイ・ブルーベリー・ナイツ」に使われた曲。映画に出演もしてましたね。

 

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しかしこんな曲もあり。終盤の”Hate” 。ずっといい感じできておいて、突如こんな真っ暗な曲をぶち込んでくるところ、さすが辛酸舐めてきたオルタナ姉御。ブレない。

 

 

"Sun"

そしてこの後、1枚のカバーアルバムを挟んで出たのが、冒頭の”Sun”です。長年の恋人と「別れて髪切って(←ベタだなおい)フランスに飛んで仕上げた」という、ある意味失恋アルバムなんですが、湿っぽさは皆無で、むしろ妙な勢いとパワーが感じられる作品。

通常音の少ない彼女の楽曲にしては珍しく、電子音がいたるところに使われています。音の層はこれまでで一番厚い。従来作品とは180度違うんですが、でも個人的には結構好き。当たり前ですが、ソングライティングとか、メロディーセンスは相変わらずどこか土臭くて彼女らしいままです。エレクトロニックアルバムを作ろう!と力んでいるところはない。直感的にこれまで使ったことない要素を自分で付け足しただけ、っていうのが無理なくて、割とすっと聴けました。

ちなみに、終盤の10分超の曲にはイギー・ポップが参加しています。大好きだけど、なぜここでイギー。

  

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“Manhattan”

“Ruin”、“Cherokee”に続いて出た3曲目のシングル。これは彼女らしいシンプルな曲で、弾き語りで弾いてるのも想像できるけど、ちょっと浮遊感のあるこのプロダクションがよく合ってる。

 

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“Real Life”

刻むようなリズムに合わせた言葉の乗せ方は、このアルバムならではかもしれないです。でもヴォーカルはあくまでいつも通りで、洗練されすぎないのがいい。

 

 

 

終わりに

 

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ということで、メインの4枚のアルバムを中心に紹介しました。

作品によって多少雰囲気は違いますが、個人的には、ものすごくパーソナルな歌を、そぎ落とされた強さで歌う人だと思います。

ライブに関しても、過去の動画とか観てるとパフォーマンスが不安定なので、あんまり大きなステージを張るよりも、せまいライブハウスでの弾き語りとかのがしっくりくる。つーかそういうライブあったら大枚はたいても行きます。(事実、フジロックで聴いたとき、感激したけれど、声も通っていなくてあんまり良いと思わなかった)

アルバムの情報はないものの、ときたまコラボレーションはしてるみたいなので、そのうち新作もくるのではないかな、と思います。そのときはまた来日して欲しい…。


『ブルージャスミン (原題Blue Jasmine)』感想

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私が一番最初に存在を知ったウディ・アレンの映画は、「アニーホール」と「ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう」でした。この2本のせいで、私のウディアレンのイメージは長らく「チビハゲの偏屈で、ちょっと変態的(褒め言葉)な映画を撮る人」でした。当たり前ですがシリアスな映画もたくさん撮ってる人でした。

 

ブルー・ジャスミンは、完全にシリアスなほうに振れている映画です。主人公ジャスミンは成功した夫の妻として、何不自由ないセレブ生活を送っていましたが、夫の金融詐欺発覚&自殺を経て、何もかも失ってしまいます。仕方なくカルフォルニアの妹の元に身を寄せるのですが、以前の生活が忘れられず、高飛車な態度のままのジャスミンは周囲ともギクシャクします。その上、精神的にも不安定で…

 

という感じのストーリーです。

以下ネタバレバレ。

 

 

主人公が立ち直るきっかけを見つける?

「転落して、精神的に参ってしまっている主人公」というと、現実を直視できない彼女を面白おかしく皮肉りながらも、最後には彼女が立ち直るきっかけを掴む映画かな~と予想してみていましたが、甘かった。そんなヒューマンドラマ的な展開は皆無です。

 

まず、開始30分で「回想の場面がやたら多くね?」と違和感。だんだんと、過去にしがみついてる女の痛い様を描くコメディでも、再生の物語でもないと気づきます。

そういう意味では、謎解きサスペンスの映画なんですよね。中盤にかけて、過去に起こった事実が紐解かれていきます。それは、実は旦那が逮捕されたのは、彼女の裏切りによるものだったということ。

ジャスミンが、夫の不倫を知って取り乱たあげく自らFBIに通報してしまい、その結果夫が自らの命を絶ってしまったということが、ことの真相でした。知っているのは、彼女と、事件の後から絶縁状態の彼女の息子のみです。

 

ここまで分かるとジャスミンの現実逃避っぷりが、全く別の意味を持ってきます。彼女は、前に進みたくないんじゃなくて、進めない。取り返しのつかない過ちを犯し、許しを乞う相手もおらず、償うこともできずに、まだ愛し合っていた頃の記憶にすがって生きている状態です。

息子っていうのは、おそらく、主人公を許すことのできる唯一の人間だったんでしょう。彼女が自分の罪を告白して、受けいれられるチャンスだった。でも、彼にきっぱりと拒否をされて、それも永遠に叶わなくなりました。

 

観てると、人を一番動けなくさせてしまうのは、罪の意識なんじゃないかと思いました。「やってしまった」その時に縛り付けられて、そこから動けない、というような。

映画の最後、息子に拒まれたジャスミンが、日差しの中ふわふわと脱力した表情でうわ言を言います。もう救いのないシーンのはずなんですが、ジャスミンを映すウディの眼差しはなんだか優しく感じます。

例えもう誰にも許されなくても、自分一人で罪を抱えたまま生きていいく、って方法もあるわけですが、でも虚栄心が強くて、綺麗なジャスミンは、今更そこまでたくましくなれないだろうなぁ、って思わされるシーンでした。

 

 

すごいよ!ケイト・ブランシェット

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“Anxiety, nightmares and a nervous breakdown, there's only so many traumas a person can withstand until they take to the streets and start screaming.”

「不安症、悪夢、神経衰弱…トラウマが多すぎて、路上で叫び出したくなるのを抑えきれないわ」 

こんな顔のケイト見たことない。彼女は元が美人で醸し出す品格が尋常じゃないので、貧乏な苦労人の役より、こういう転落役が似合いますね。「あるスキャンダルの覚え書き」 もそういう意味では似ています。

ブラック・レーベル・モーターサイクル・クラブ BRMC 各アルバム紹介

前回(ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ BRMC ノイジーだけじゃない、硬派なロックバンド - Sweet dreams,に引き続き、アメリカのロックバンド、ブラック・レーベル・モーターサイクル・クラブの紹介。

アルバム別に紹介します。

 

B.R.M.C (2002) 個人的評価★★★★★

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デビュー作。やっぱり、最初に聴くならこれです。アルバム全体の完成度が高くて、捨て曲ほぼなし。グルーヴうねる濃いロックが好きな人には超おすすめ。                         もっとノリのいい、ハードなのが聴きたい人は2ndアルバムへ、土臭い感じが気に入った人は3rdアルバムへいきましょう。人気曲、”Whatever Happend to My Rock ’N Roll?"収録。

◾︎おすすめは"Love Burns" 、"Red Eyes And Tears"、"White Palms"、"Spread Your Love" 、

日本版ボーナストラックの"Down Here"は名曲。

www.youtube.com "Love Burns" アルバム1曲目。アコギでしっとり始まったかと思いきや、途中からやっぱりギュンギュンいいだす。

 

 

 Take Them On, On Your Own (2004) 個人的評価★★★★☆

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1stよりもよりハードになった2ndアルバム。「奴らにたちむかえ、自分一人で」という反骨心のあるタイトルからして、彼らの作品の中では特に政治的でメッセージ性の強い作品。エフェクトはがっつりですが、割とキャッチーな曲も多いので、ある意味聴きやすいかも。

◾︎おすすめ曲は、 "Stop"、"In Like The Rose"、"Shade Of Blue"、"Rise and Fall"

www.youtube.com シングル曲"Stop"

 

 

Howl (2005) 個人的評価★★★★★

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アルバム1曲め、"Time won't save our souls" 「時間は、俺らの魂を癒しちゃくれない」って野太いコーラスから始まる激シブの3rd。彼らのキャリアの中でもルーツミュージックに振り切った異色作で、ボブ・ディランばりのギターとハーモニカの曲は、前作が好きな人は困惑必須。でも内省的でソウルフルなこのアルバムは、刺さる人にはめちゃくちゃ刺さると思います。トワイライト・ニュームーンのサントラ収録”Done All Wrong”が好きな人は、このアルバムから入ってもいいかも。

◾︎おすすめ "Shuffle Your Feet"、"Devil's Waiting"、”Ain't No Easy Way”、"Weight Of The World"、"The Line"

www.youtube.com "Shuffle Your Feet" しょっぱなから音出るので注意

 

 

 Baby 81 (2007) 個人的評価★★★☆☆

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初期メンバー体制で制作された最後のアルバム。今のところ出ているアルバムの中では、一番キャッチーでポップなアルバム。加えて音も比較的すっきりしているので、非常に聴きやすい作品ですが、1stアルバムのファンとかには少し物足りないかも。シングル曲"Berlin"はサビの繰り返しが若干単調ですが、かっこいいです。 

◾︎おすすめ "Took Out A Loan"、"Berlin"、"666 Conducer"、"American X"、

www.youtube.com "Belin"

 

 

 Beat The Devil's Tatoo (2010) 個人的評価★★★★☆

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新しく女性ドラマーを迎えて作られた5thアルバム。シングル曲の"Beat The Devil's Tatoo"は、最初のカントリーっぽい曲調から、どんどん重たくグルーヴィーになっていく、凄く彼ららしい曲。全体的に洗練されていて、まとまった印象の曲が多いですが、新メンバーの加入もあって、5作目ながら新鮮な勢いがあります。

なんかこの人らやたらデビル好きだなぁと思ってたら、アルバムタイトルは詩からの引用みたいです。

◾︎おすすめ "Beat The Devi's Tatoo"、"Conscience Killer"、"River Styx" 、"Aya"

www.youtube.com 思わず「あやちゃん…?」と反応したくなる"Aya"

 

 

 Specter At The Feast (2012) 個人的評価

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一聴した印象は地味ですが、良曲は多い6thアルバム。一発分かりやすいキラーチューンはないけど、作り込まれた曲が多い印象。メンバーの父親が亡くなった直後という時期が時期なだけに、地を這うようなハードな苦悩してる感じの曲と、追悼曲みたいな神神しい雰囲気の曲が混在しています。デビュー当時から、ときどきこんな感じの宗教色強い曲が入ってきますが、このへんはキリスト教文化圏に育っていない自分には本当には分かりません。

◾︎おすすめ "Fire Walker"、"Returning"、"Sell It"、"Lose Yourself"

www.youtube.com 今作は冒頭からじわじわスタート"Fire Walker"

 

 

最初に聴くなら

個人的に、ひとまず最初の3枚のアルバムの中2枚の曲をざっと聴いて、気に入れば後の作品を攻めるのがお勧めです。

勢いのあるロックが好きな人なら

→1st『B.R.M.C』と2ns『Take Them On, On Your Own』

ルーツミュージックぽいのも好きな人なら

→1st『B.R.M.C』と3rd『Howl』の組み合わせでそれぞれ聴くのがお勧めです。 

ちなみ、現在バンドはアメリカ国内をツアー中。(つくづく働き者…)近いところでは2010年サマソニ、2013年単独来日公演と、アルバムを出したらけっこう律儀に来日してくれる方なので、おそらく次のアルバムの際には、来日もあるんじゃないかなぁと思います。

 

 

 

 

 

 

ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ BRMC ノイジーだけじゃない、硬派なロックバンド

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左からロバート・レヴォン・ビーン(ベース、ヴォーカル)、リア・シャピロ(ドラム)、ピーター・ヘイズ(ギター、ボーカル)

Black Rebel Motorcycle Clubブラック・レベル・モーターサイクル・クラブって誰ぞや?

サンフランシスコ出身の3ピースバンド。2000年代初頭に、ホワイト・ストライプスストロークスリバティーンズが重要なアルバムを出して、もてはやされていたのと同時期にデビュー。当初は、そのロックンロール・リヴァイヴァルの流れの中で、”Whatever Happend to My Rock ’N Roll? (俺のロックンロールに何が起こったんだ?)” という象徴的な曲とともにメディアに取り上げられることも多々あった?ようなんですが、それから早15年、まーー注目されないされない。

www.youtube.com "Whatever Happened To My Rock N' Roll?"

上記のバンドのように一時代を代表するようなバンドではないし、バンドとしての引き出し少ないし、アルバム単位で全曲聴くのがきつい作品もあるのですが(←ひでえ)、硬派でかっこいいロックバンドだと思うので、以下、まとめます。

 

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デビューの頃の3人。マジおぼこい!一番左が初期ドラマーのニック。彼は4thアルバムを最後に脱退。

基本的には、デビュー当時から一貫してThe Jesus and Mary Chainみたいな、音の歪んだギターの印象が強いロックバンド。一方で、ブルースやカントリーを感じさせる土臭いグルーヴも根っこにあるというのが、大きな魅力です。 

 

まずはシングルを中心に5曲

以下有名どころを中心に5曲。

 

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"Spread Your Love"

デビューアルバムからの代表曲。イントロがカッコいい。”Whatever~”と並ぶライブの十八番。

  

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"In Like The Rose" 

2ndアルバムから。シングルではないけど、メロディーがキャッチーで中毒性あり。

 

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"Ain’t No Easy Way "

ファンの度肝を抜いた3rdアルバムの第一シングル。ギュルンギュルン鳴るギターにハーモニカ、そしてえろいビデオ。

 

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"Weight Of The World" 

3rdアルバムを代表する名曲。デビュー曲の"Love Burns"に通じる、メロディーが染みる曲です。

 

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"Conscience Killer"   

5th アルバムからのシングル。冒頭から疾走感があって、わかりやすくかっこいい。新しく加入した女性ドラマーのバックコーラスも良い!

 

番外編 

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"Mercy"

アルバム未収録ですが、ライブでもほぼやる人気曲。このちょっと哀愁漂う切ない感じは、日本人の琴線に触れると思う。

 

現在も活動中

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基本的に黒の服しか着ない人々…楽そう。

 

現在に至るまで、大体2〜3年のスパンで、定期的にアルバムを作り続けています。働きもん!ただ一昨年ドラマーのリアが脳の手術を受けたとかで、最新アルバムは少し間があきそう。

新しい音を取り入れて変化していくというより、愚直に自分たちの本分の音楽を作っていくタイプのバンドです。デヴィット・ボウイのように常に進化し続けます的な、挑発的なミュージシャンもかっこいいですが、こういう頑なに自分たちの音楽をやってるバンドとか見るとほっとします。フーファイのデイヴ・グロールは、上の男衆二人とコラボした時に、あまりに喋らなさすぎてびっくりしたらしい。笑(フーファイのレコーディングとか、すごい賑やかそうですもんね…)

バンドとして先鋭的・スタイリッシュなイメージもなく、あまり話題にもなりませんが、でも例え売れなくなっても、ずっと音楽作っていくだろうなぁ、と妙な信頼感の持てるバンド。

 

長くなったので、アルバム別の紹介は次に分けます。

 

 

 

 

『ノーカントリー(原題No Country For Old Men)』感想ーアメリカの荒涼とした大地とおかっぱ

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アカデミー賞の主要部門をかっさらい、実質その年を代表する映画だったノーカントリー。しかし間違っても「評価高いらしいよ!」と友達と気軽に見る映画ではない。(鑑賞後ウンウン議論したいなら別)実際、私の周りでも、「なんでそんな評価されてるのか分からん」の声の方が多かった。整理する意味でも、以下に感想と解釈をまとめます。ネタバレします。

映画は、麻薬取引の絡んだ金をなりゆきで手にいれたルウェイン(ジョシュ・ブローリン)、彼を追うおっかねえ殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)と麻薬組織の面々、そして両者を追いながらもルウェインを守ろうとするベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)を中心に進みます。

”No Country For Old Man”という原題が示す通り、老いたベル保安官が事件の顛末を見届け、自らの力が全く及ばなかったという苦い思いと共に辞職する所で、映画は終わります。彼が映画のナレーターで、主人公でもあります。

 

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シガーこと、ハビエル・ザ・おかっぱ。アカデミー賞ゲットしたで


ベル保安官は、なんで最後辞職するのか?

映画の主要なキャラクターたちは、大きく3つに分けられます。

◾︎古き良き、たくましいアメリカ人の精神を体現する人々…ルウェイン、ベル保安官
◾︎麻薬取引に代表される、組織犯罪のプレーヤー…メキシコ人、もう一人の殺し屋、それを雇う幹部達
◾︎意味不明の黒づくめの男…シガー 

ぱっと見、ベル保安官は、麻薬取引などの複雑化・凶悪化する犯罪に「もう年寄りの出番ちゃうわ」と諦めを持って退く男に見えますが、そーではない。それ以上に、彼はシガーという男が象徴するものに敗れて去っていきます。
このシガーという男がもたらす厄災、ってのは、別に時代とか関係なく、もっと昔からあった、根源的な脅威、という感じがします。だからシガーの前では、善きアメリカ人だろうが、麻薬組織の犯罪者、別の殺し屋だろうが、「マジわけわからん」まま、なすすべなく死んでいきます。
麻薬組織だって、彼らなりの利害やルールにのっとってビジネスしてる”悪”なわけです。でもシガーにはルール、規範、みたいなものは一切ない。「決めるのはあなたよ」という、自身の決断によって、物事を行う(アメリカ人がすごく重視する価値観でもある)ということも全く解さず、人々を破滅させていきます。

シガーの体現する”悪は”とにかく不条理に死をもたらす、化物みたいなものです。ベル保安官の年老いた叔父がいう、“This country is hard on people.(この国は人に対して残酷だ)” というのは、決して最近の犯罪だけを指しているのではなく、その、昔からアメリカの大地にある残酷さ、不条理な死、というものを示しているのだと思います。

 

ベル保安官の最後の夢

恐怖に対峙し、魂を危険にさらした上で、完全に敗れたベル保安官。まさに祖父も言っていた「やってくるものは、止められない」ことを悟り、辞職します。諦念の中で隠居生活を送るベル。父と祖父から受け継いだものを守ってきたが、自分もやっぱり彼らと同じように敗れた。でも、彼らはこの道の先で待っていてくれる、という趣旨の夢をポツリと語るところで、映画が終わります。

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こういう、誰も助けてくれない、苛酷で荒涼した大地、というのがアメリカ人の心の原風景なんでしょうかね。

 

ファーゴと比べて

ノーカントリー」は、同じように「過大評価」と言われがちなコーエン監督の「ファーゴ」と、どちらのもアメリカという土地の暗部や、気の滅入る犯罪を描いているという所でよく似てます。ただ個人的に「ファーゴ」はいただけなかった。極めてよくできた映画ではあるのだろうけど、次々ぶっ込まれるブラックユーモアがもはや笑えなくて、ただ救いようのなさ、後味の悪さがこたえました。その点、ノーカントリーは全体的に抑制が効いていて見やすいし、緊迫した逃亡劇もスリラーとして楽しめます。出てくる風景もこっちのが美しいし。救いのなさは一緒だけど。善人だからって助からないYO!

完全に余談。ルウェインの妻役で、ケリー・マクドナルドが出てて個人的には嬉しかったけど、アメリカ南部のおじょーさん役似合わなさすぎてびっくり。そういう意図なのか?終盤のシガーとのシーンが良かったですね。



『17歳の肖像(原題An Education)』感想ー60s 英国女子の通過儀礼

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1961年のイギリスが舞台。芸術やジャズ、パリに憧れる早熟な女子高生ジェニー(キャリー・マリガン)が、年上の男性デイヴィット(ピーター・サースガード)に連れられて、退屈な学校生活からは考えられないような華やかな社交界へ足を踏み入れる。デイヴィットやその友人たちとコンサートや上品なレストランに通い、果てはパリにまで行った主人公は、次第に学校の勉強に対し意味を見出せなくなっていく…というストーリー。

 

↓以下ネタバレ↓

ちょっと昔の映画で、地味だけど良作。大筋としては、主人公が恋愛で痛い目に遭いながらも大切なことを学ぶ、というまっとうな通過儀礼話になっていて、安心して観れます。

女性視点の戦後のイギリス社会が垣間見れて面白い。大学を卒業したところで、主婦やしがない教師になるしか道がない。周りの女性を見ても、希望なんて持てない。じゃぁ、なんのために学ぶのか?そんなにしんどい思いして勉強して就職しなくたって、玉の輿乗る方が良いじゃねえかどうなのよ!と迫るジェニーに対して「でもほら、教職以外にも公務員とかあるし…」と歯切れの悪い校長先生の言葉が残念至極。

程度の差はあれど、先が見えない、閉塞感のある社会での教育、という意味では普遍的なテーマかもしれません。戦後60年代、ビートルズが出てくる前のイギリスってほんっとうにシケてたんだな!!!ってのがよく分かります。この頃ってもろにアラン・シリトーが「土曜の夜と日曜の朝」とか描いてた時期でもありますね。

校長先生からは求める答えを得られなかった主人公ですが、最後それを、身近な女教師から見てとります。ひどくつまらなく見えた彼女も、自分の足で立って、自分の好きなものに囲まれ、立派に一人で生きている。若いうちにその責任と自由を他の誰かに託してはいけない、ということを実感として学んだ、というのが原題にもある「An Education」なんでしょう。

 

あと、この映画なんと言ってもキャストが良いです。

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筆頭キャリーマリガンは校長先生演じるエマ・トンプソンとの応酬のシーンでも、引けを取らない存在感。だんだん洗練されていく服装も凄く似合ってて可愛い。

 

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(左)デイヴィッド役のピーター・サースガードのにやけ顔は見るからに胡散臭いんだけど、高校生とかはこういう「大人」にコロリといくよね!っていう見掛け倒しの知性とか、紳士っぷりがイイですね。最後は不倫男テンプレ通りの退場で、ごっつあんです。 

(真中)しばらく”「ゴーンガール」の怖い人”として記憶されそうなロザムンド・パイク。教養はない、でも自分がどう立ち振る舞えば安全なのかということを理解している、憎めない女の役は説得力ありました。

(右)登場時間少ないけど、個人的にとても印象強かったサリー・ホーキンス。主人公と会った時の「嘘でしょう。あなた、子供じゃない」ってセリフが刺さります。

あと、女教師とか、主人公のお父ちゃんとかも凄くいい味出していました。

 

ある意味、分かりやすいストーリーで先が読めちゃう感もありますが、ファッションや文化的な描写と、俳優陣が良いので、今見ても楽しめる映画だと思います。