Sweet dreams,

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映画、音楽、好きなものに関するあれこれ

『ブルージャスミン (原題Blue Jasmine)』感想

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私が一番最初に存在を知ったウディ・アレンの映画は、「アニーホール」と「ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう」でした。この2本のせいで、私のウディアレンのイメージは長らく「チビハゲの偏屈で、ちょっと変態的(褒め言葉)な映画を撮る人」でした。当たり前ですがシリアスな映画もたくさん撮ってる人でした。

 

ブルー・ジャスミンは、完全にシリアスなほうに振れている映画です。主人公ジャスミンは成功した夫の妻として、何不自由ないセレブ生活を送っていましたが、夫の金融詐欺発覚&自殺を経て、何もかも失ってしまいます。仕方なくカルフォルニアの妹の元に身を寄せるのですが、以前の生活が忘れられず、高飛車な態度のままのジャスミンは周囲ともギクシャクします。その上、精神的にも不安定で…

 

という感じのストーリーです。

以下ネタバレバレ。

 

 

主人公が立ち直るきっかけを見つける?

「転落して、精神的に参ってしまっている主人公」というと、現実を直視できない彼女を面白おかしく皮肉りながらも、最後には彼女が立ち直るきっかけを掴む映画かな~と予想してみていましたが、甘かった。そんなヒューマンドラマ的な展開は皆無です。

 

まず、開始30分で「回想の場面がやたら多くね?」と違和感。だんだんと、過去にしがみついてる女の痛い様を描くコメディでも、再生の物語でもないと気づきます。

そういう意味では、謎解きサスペンスの映画なんですよね。中盤にかけて、過去に起こった事実が紐解かれていきます。それは、実は旦那が逮捕されたのは、彼女の裏切りによるものだったということ。

ジャスミンが、夫の不倫を知って取り乱たあげく自らFBIに通報してしまい、その結果夫が自らの命を絶ってしまったということが、ことの真相でした。知っているのは、彼女と、事件の後から絶縁状態の彼女の息子のみです。

 

ここまで分かるとジャスミンの現実逃避っぷりが、全く別の意味を持ってきます。彼女は、前に進みたくないんじゃなくて、進めない。取り返しのつかない過ちを犯し、許しを乞う相手もおらず、償うこともできずに、まだ愛し合っていた頃の記憶にすがって生きている状態です。

息子っていうのは、おそらく、主人公を許すことのできる唯一の人間だったんでしょう。彼女が自分の罪を告白して、受けいれられるチャンスだった。でも、彼にきっぱりと拒否をされて、それも永遠に叶わなくなりました。

 

観てると、人を一番動けなくさせてしまうのは、罪の意識なんじゃないかと思いました。「やってしまった」その時に縛り付けられて、そこから動けない、というような。

映画の最後、息子に拒まれたジャスミンが、日差しの中ふわふわと脱力した表情でうわ言を言います。もう救いのないシーンのはずなんですが、ジャスミンを映すウディの眼差しはなんだか優しく感じます。

例えもう誰にも許されなくても、自分一人で罪を抱えたまま生きていいく、って方法もあるわけですが、でも虚栄心が強くて、綺麗なジャスミンは、今更そこまでたくましくなれないだろうなぁ、って思わされるシーンでした。

 

 

すごいよ!ケイト・ブランシェット

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“Anxiety, nightmares and a nervous breakdown, there's only so many traumas a person can withstand until they take to the streets and start screaming.”

「不安症、悪夢、神経衰弱…トラウマが多すぎて、路上で叫び出したくなるのを抑えきれないわ」 

こんな顔のケイト見たことない。彼女は元が美人で醸し出す品格が尋常じゃないので、貧乏な苦労人の役より、こういう転落役が似合いますね。「あるスキャンダルの覚え書き」 もそういう意味では似ています。